コーヒーを飲む人は長生き? 観察研究で分かること、分からないこと
「コーヒーを飲む人は長生き」という話を聞いたことはありませんか。何百万人分のデータから見えてきたことと、まだ言えないことを分けて整理しました。
- コーヒーをよく飲む人ほど、追跡中に亡くなる割合がやや低いという関連が、世界の多くの調査で見られている
- 差が最も大きいのは1日3〜4杯ほどで、それ以上飲んでも差は広がらなかった
- 観察研究なので、コーヒーが長生きの原因かどうかは分からない。妊娠中は多く飲まないほうがよいという報告もある
コーヒーをよく飲む人ほど、その後に亡くなる割合がやや低いことが、世界の多くの調査で報告されています。ただし、コーヒーが長生きの原因かどうかは分かっていません。比較の試験で確かめられているのは、飲んだ日の体の反応までです。
どれくらいの差が見られた?
2019年に、40の研究、合わせて約385万人のデータをまとめた解析が発表されました。コーヒーを飲まない人に比べ、1日3.5杯ほど飲む人は、追跡中に亡くなる割合が15%低くなっていました。それより多く飲んでも、差はそれ以上広がりませんでした。
アジアでも、同じような結果が出ています。日本・中国・韓国・シンガポールの12の調査、約53万人をまとめた研究です。1日5杯以上飲む人は、飲まない人に比べ、亡くなる割合が男性で24%、女性で28%低くなっていました。この研究では、緑茶をよく飲む人でも割合が低くなっていました。
コーヒーと健康についての解析を200本以上集めた2017年のまとめもあります。全体として、コーヒーは害より益と結びつく結果が多く、1日3〜4杯で差が最も大きいという結果でした。
カフェインのおかげ?
英国の約50万人を約10年追った研究があります。インスタントでも豆から淹れたものでも、似た関係が見られました。カフェインを抜いたコーヒーでも同じでした。
カフェインを体の中で分解する速さは、生まれつきの体質で違います。この研究では、分解が速い人でも遅い人でも、結果は変わりませんでした。そのため研究チームは、カフェイン以外の成分が関わっている可能性を挙げています。ただし、どの成分なのかは分かっていません。
「飲めば長生きする」と言える?
ここまでの研究は、どれも「観察研究」です。ふだんの暮らしのまま、飲む量とその後の健康を見比べる方法です。分かるのは「よく飲む人は長生きの傾向がある」という関連までです。
コーヒーをよく飲む人と飲まない人では、暮らし方や体調がもともと違うかもしれません。たとえば、体調がすぐれない人がコーヒーを控えている可能性もあります。研究では年齢やたばこなどの影響を差し引いていますが、すべてを取り除くことはできません。2017年のまとめの研究チームも、原因と言えるかは比較試験で確かめる必要があると書いています。
「比較試験」は、条件をくじ引きで割り振って違いを比べる方法です。2023年に米国で、100人を対象にした試験が発表されました。2週間、毎日スマートフォンのメッセージで、その日に飲むか控えるかを割り振りました。
飲んだ日は、控えた日に比べ、1日の歩数が約1,000歩多く、夜の睡眠が約36分短くなっていました。心臓の上の部屋から出る余分な拍動は増えませんでしたが、下の部屋から出る余分な拍動は増えていました。血液中の糖の値には差がありませんでした。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 1日3〜4杯ほど飲む人の、亡くなる割合(40研究・約385万人のまとめ) | 根拠 初期 | 飲まない人より約15%低い |
| 日本を含むアジアの12の調査(約53万人) | 根拠 初期 | 1日5杯以上で男性24%・女性28%低い |
| カフェインを抜いたコーヒーでも同じか(英国・約50万人) | 根拠 初期 | 似た関係が見られた |
| 飲んだ日と控えた日の比較(100人・2週間の比較試験) | 根拠 有望 | 歩数は約1,000歩多く、睡眠は約36分短い |
| 妊娠中に多く飲むこと(観察研究のまとめ) | 根拠 初期 | 出生時の体重が少ないことなどと関連 |
では、どうすればよいか
2017年のまとめは、ふだん飲む程度の量なら、コーヒーはおおむね安全だろうと結論づけています。ただし、長生きのために飲み始めることを勧める根拠は、今のところありません。
- 今コーヒーを楽しんでいる方は、ふだんの量のままでかまわない(妊娠中を除く)
- 飲まない方が、長生きのために無理に飲み始める必要はない
- 眠りが浅いと感じる方は、午後遅くからはカフェインを控えてみる
- 妊娠中・授乳中の方、骨折しやすいと言われている方、動悸が気になる方は、飲む量を医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 40研究のまとめ(Eur J Epidemiol 2019) | 385万2,651人、死亡45万256人。全死亡の危険度が最も低いのは1日3.5杯(0.85)。それ以上で追加の低下なし。年齢・体重・飲酒・喫煙・カフェインの有無にかかわらず関連。欧州とアジアで米国より関連が強い |
|---|---|
| アジアの12の調査(Int J Epidemiol 2022) | 中国・日本・韓国・シンガポールの男性24万8,050人・女性28万454人、死亡9万4,744人。1日5杯以上で全死亡が男性24%・女性28%低い。緑茶でも全死亡・心血管死が低い。紅茶は関連が弱い |
| 英国の約50万人の研究(JAMA Intern Med 2018) | 49万8,134人、10年、死亡1万4,225人。飲まない人に比べ、1日2〜3杯で危険度0.88、8杯以上で0.86。インスタント・豆・カフェインレスで同様。カフェイン分解の遺伝的な違いで差なし |
| コーヒーと健康の総まとめ(BMJ 2017) | 観察研究の解析201本・介入研究の解析17本を集約。1日3〜4杯で全死亡の危険度0.83。妊娠中の多量摂取は低出生体重(1.31)・早産・流産(1.46)と関連。女性で骨折との関連 |
| 2週間の比較試験(N Engl J Med 2023) | 成人100人、平均39歳。主な評価項目(心房からの余分な拍動)は有意差なし。心室からの余分な拍動は1日154回対102回、歩数は1日1,058歩多く、睡眠は36分短い。血糖値は差なし。資金: カリフォルニア大学サンフランシスコ校・米国国立衛生研究所。登録番号 NCT03671759 |
- Kim Y, et al. Coffee consumption and all-cause and cause-specific mortality: a meta-analysis by potential modifiers. Eur J Epidemiol. 2019. PMID 31055709
- Shin S, et al. Coffee and tea consumption and mortality from all causes, cardiovascular disease and cancer: a pooled analysis of prospective studies from the Asia Cohort Consortium. Int J Epidemiol. 2022. PMID 34468722
- Loftfield E, et al. Association of Coffee Drinking With Mortality by Genetic Variation in Caffeine Metabolism: Findings From the UK Biobank. JAMA Intern Med. 2018. PMID 29971434
- Poole R, et al. Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analyses of multiple health outcomes. BMJ. 2017. PMID 29167102
- Marcus GM, et al. Acute Effects of Coffee Consumption on Health among Ambulatory Adults. N Engl J Med. 2023. PMID 36947466
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












