筋トレは週何回で、長生きに近づく?
ウォーキングに比べて、筋トレと長生きの関係はあまり知られていません。どのくらいの量で差が出るのか、年をとってから始めても意味があるのかを、人の研究から整理しました。
- 筋トレをしている人は、していない人より追跡中に亡くなる割合が10〜17%低いと、16の追跡調査のまとめで報告されている
- 差が最も大きかったのは週30〜60分ほど。週2回が目安になりそうで、長くやるほどよいとは限らない
- 筋力が伸びることは高齢者の比較試験で確かめられているが、寿命がのびるかはまだ分かっていない
筋トレをしている人は、していない人より、追跡中に亡くなる割合が10〜17%低いと報告されています。世界の追跡調査をまとめた研究の結果です。差が最も大きかったのは週30〜60分ほどで、週2回程度がひとつの目安になりそうです。
ただし、どれも観察研究(ふだんの暮らしをそのまま調べ、その後の健康と見比べる方法)です。筋トレで寿命がのびると確かめたものではありません。
筋トレをする人は、長生きしている?
2022年に、東北大学などの日本の研究チームが、16の追跡調査をまとめました。対象は、重い持病のない大人です。筋トレをしている人は、亡くなる割合が10〜17%低くなっていました。ウォーキングなどの有酸素運動の影響を、差し引いたうえでの数字です。心臓や血管の病気、がん、糖尿病になる割合でも、同じような傾向でした。
英国では、30歳以上の約8万人を調べた研究があります。ジムでの運動に加え、自分の体重を使う運動も筋トレとして数えています。筋トレだけを週2回以上していた人は、どちらの目安も満たさない人より亡くなる割合が21%低くなっていました。有酸素運動の目安も合わせて満たしていた人では、29%低くなっていました。
週何回、何分がよい?
日本のまとめでは、筋トレの時間と亡くなる割合の関係も調べています。差が最も大きかったのは週30〜60分ほどで、およそ10〜20%低くなっていました。それより長くなると、差はかえって小さくなっていました。
長くやると悪いのかどうかは、まだ分かっていません。研究チームも、多い量の影響ははっきりしないとしています。少なくとも、長い時間をかけなくてよい可能性は示されています。
筋力については、比較試験(くじ引きで組に分け、片方だけ運動してもらって比べる方法)で確かめられています。65歳以上の健康な人を対象にした25の比較試験のまとめでは、筋トレで筋力が大きく伸びていました。週の回数ごとに見ると、週2回の組で伸びが最も大きくなっていました。
年をとってから始めても意味がある?
高齢者約6,700人が参加した、121の比較試験をまとめた解析があります。多くは、週2〜3回の筋トレでした。筋力ははっきり伸び、椅子から立ち上がる動作も楽になっていました。歩く速さは、わずかに速くなる程度でした。
注意点もあります。関節の痛みや筋肉痛は、多くの研究で報告されていました。重い副作用はまれで、運動が直接の原因とされたものはありませんでした。ただし、副作用をきちんと記録していない試験が多いとも書かれています。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 筋トレをする人ほど、亡くなる割合が低いか(16の調査のまとめ) | 根拠 初期 | 10〜17%低い傾向 |
| 週何分で差が最も大きいか(同じまとめ) | 根拠 初期 | 週30〜60分。それより長いと差は小さく |
| 週2回以上の筋トレ(英国の約8万人) | 根拠 初期 | 21%低い。有酸素運動も満たすと29% |
| 筋力が伸びるか(65歳以上・25の比較試験のまとめ) | 根拠 確立 | 大きく伸びた。週2回で伸びが最大 |
| 椅子からの立ち上がり・歩く速さ(121の比較試験のまとめ) | 根拠 確立 | 立ち上がりは楽に。歩く速さはわずかに速く |
では、どうすればよいか
世界保健機関(WHO)の2020年の指針は、すべての年代に、定期的な筋トレを勧めています。ウォーキングなどの有酸素運動と、筋トレの両方を続けることが大切だとしています。まずは週2回、短い時間から始めてみてください。
- 週2回、合わせて30〜60分をひとつの目安にする
- 椅子からの立ち座りや、壁に手をつく腕立て伏せなど、自分の体重を使う運動から始めてもよい
- ウォーキングなどの有酸素運動と組み合わせる
- 関節に痛みがある方、心臓や血圧の持病がある方は、始める前に医師に相談する。運動中に痛みや息苦しさが出たら中止する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 16の追跡調査のまとめ(Br J Sports Med 2022) | 重い持病のない18歳以上を対象にした前向きコホート研究16本。有酸素運動とは独立に、筋トレで全死亡・心血管病・がん全体・糖尿病・肺がんの危険が10〜17%低い。全死亡・心血管病・がん全体は週30〜60分前後で最大の低下(約10〜20%)を示すJ字型の関連。著者は利益相反なしと開示。東北大学・早稲田大学・九州大学 |
|---|---|
| 英国の約8万人(Am J Epidemiol 2018) | イングランドとスコットランドの健康調査(1994〜2008年)、30歳以上8万306人、死亡5,763人。筋トレの指針(週2回以上)だけを満たす人の全死亡のハザード比0.79、有酸素運動の指針だけで0.84、両方で0.71。ジムでの運動と自分の体重を使う運動を含む |
| 65歳以上の25試験のまとめ(Sports Med 2015) | 平均65歳以上の健康な人を対象にした比較試験25本。筋トレで筋力が大きく向上(標準化平均差1.57)、筋肉の量は小さな効果(0.42、9試験)。単独の変数では週2回・1種目2〜3セット・1セット7〜9回で筋力の伸びが最大。限界: 試験の質が低い(PEDro平均4.6点)、ばらつきが大きい(I²=80%) |
| 121試験のまとめ(Cochrane 2009) | 高齢者を対象にした漸増的な筋トレの比較試験121本・6,700人。多くは週2〜3回・高い強度。筋力に大きな効果(標準化平均差0.84)、椅子からの立ち上がりに中〜大の効果、歩行速度は毎秒0.08m向上。関節痛・筋肉痛の報告が多い。重い有害事象はまれで運動が直接の原因とされたものはない。有害事象の記録は不十分 |
| WHOの指針(Br J Sports Med 2020) | 成人は週150〜300分の中強度、または75〜150分の高強度の有酸素運動。すべての年代に定期的な筋トレを推奨。座りすぎを減らすことも推奨 |
- Momma H, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022. PMID 35228201
- Stamatakis E, et al. Does Strength-Promoting Exercise Confer Unique Health Benefits? A Pooled Analysis of Data on 11 Population Cohorts With All-Cause, Cancer, and Cardiovascular Mortality Endpoints. Am J Epidemiol. 2018. PMID 29099919
- Borde R, et al. Dose-Response Relationships of Resistance Training in Healthy Old Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2015. PMID 26420238
- Liu CJ, Latham NK. Progressive resistance strength training for improving physical function in older adults. Cochrane Database Syst Rev. 2009. PMID 19588334
- Bull FC, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020. PMID 33239350
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












