スマートウォッチの睡眠記録は、どこまで正確?
腕時計型や指輪型の機器が毎朝見せてくれる睡眠のグラフ。眠った時間はおおむね測れていますが、「深い眠り」などの内訳はまだ大まかな推定だと、多くの研究が示しています。
- 「寝ているか、起きているか」の見分けは得意。眠った時間はおおむね合っている
- 夜中に目が覚めている時間や、「深い眠り」などの内訳は苦手で、機種によってずれる
- 数字にこだわりすぎて、かえって眠れなくなる人もいる。長い目で傾向を見る道具として使う
スマートウォッチの睡眠記録は、「どのくらい眠ったか」の目安としてはおおむね使えます。一方で、「深い眠り」「レム睡眠」といった眠りの内訳は、病院の検査と比べるとずれが大きく、まだ大まかな推定です。
何と比べて「正確」を調べている?
眠りを最も詳しく測る方法は、病院や研究室で一晩かけて行う終夜睡眠ポリグラフ検査です。頭などに電極をつけて脳波を測り、眠りの段階を細かく判定します。
腕時計型の機器は、脳波を測っていません。手首の動きと心拍のリズムから、眠りを推定しています。研究では、機器とこの検査を同じ夜に同時に使い、結果がどれだけ一致するかを比べます。
「寝ているか、起きているか」はどのくらい合う?
眠っている時間を見分ける力は高いと、複数の研究で報告されています。米国の研究では、健康な若い大人34人が3晩、腕時計型4つと寝床に置く型3つの機器を使いました。どの機器も、眠っている時間を「眠っている」と判定できた割合は93%以上でした。指輪型の機器を調べた28本の論文をまとめた2026年の解析でも、寝ているか起きているかの一致は87%でした。
苦手なのは、夜中に目が覚めている時間です。米国の研究では、起きている時間を「起きている」と正しく判定できた割合は18〜54%にとどまりました。眠りが乱れた夜ほど、機器の成績は落ちる傾向もありました。
ある腕時計型の機器について、8本の研究をまとめた解析もあります。手首の動きだけで判定する古い型は、眠った時間を約7〜67分多く見積もっていました。夜中に目が覚めていた時間は、少なく見積もっていました。心拍のリズムも使う新しい型では、こうしたずれは小さくなっていました。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 寝ているか、起きているかの見分け | 根拠 確立 | おおむね合う(指輪型28論文のまとめで一致87%) |
| 夜中に目が覚めている時間 | 根拠 有望 | 少なめに出やすい。新しい型ほどずれは小さい |
| 浅い眠り・深い眠り・レム睡眠の内訳 | 根拠 確立 | ずれが大きい(一致65〜81%) |
| 「よく眠れた」という自分の感覚との一致 | 根拠 初期 | 低い〜中くらい。不眠症の人や高齢者で特に低い |
| 数字へのこだわりで眠れなくなる人がいるか | 根拠 初期 | 一部の人で起きると報告(症例の報告と1つの調査) |
「深い眠り」のグラフは信じていい?
眠りの内訳は、まだ苦手な分野です。先ほどの指輪型の解析では、浅い眠りの一致は65%、深い眠りは81%、レム睡眠(夢を見ることが多い眠り)は74%でした。米国の研究でも、眠りの段階の判定は機種によってばらばらでした。
機器の数字と「よく眠れた」という自分の感覚も、あまり一致しません。5つの研究(合計2,006人)をまとめた2026年の解析があります。機器の数字で説明できた感覚の違いは、2.5〜16.2%にとどまりました。一致した割合は、よく眠れている人で82.4%だったのに対し、不眠症の人では39.4%でした。高齢の方でも一致は低めでした。
では、どうすればよいか
記録には落とし穴もあります。米国の睡眠の専門家は2017年、機器のグラフで「浅い眠りが多い」と見て、自分は不眠だと思い込む人がいると報告しました。そうした理由で受診する人が増えているそうです。この状態はオーソムニア(完ぺきな眠りへのこだわり)と名づけられています。523人を調べた研究では、判定の基準によって3.0〜14.0%の人がこの状態に当たると推定されました。
病気の見つけ方としても、使える範囲は限られます。眠っている間に呼吸が止まる睡眠時無呼吸について、指輪型の解析は次のようにまとめています。重いものをふるい分けるのには使える可能性があるものの、軽いものの診断には代わらない、というものです。
機器は、眠りを診断する道具ではありません。毎日の数字に一喜一憂するより、生活の変化に気づくための記録として使うのがよさそうです。
- 1晩ごとの数字より、数週間の平均や傾向を見る
- 眠った時間や、寝た・起きた時刻は参考になる。「深い眠り」の分数は大まかな目安として見る
- 朝の気分や日中の調子など、自分の感覚も一緒にメモしておく
- 数字が気になって眠れなくなるなら、しばらく記録を見ないのも一つの方法
- 大きないびきがある、眠っている間に息が止まると言われた、日中の強い眠気が続く場合は、機器の判定に頼らず医療機関へ
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 7機種と検査の比較(Sleep 2021) | 健康な若い大人34人(女性22人・平均28.1歳)を研究室で3晩(うち1晩は眠りを乱す条件)。腕時計型4機種・寝床に置く型3機種と研究用の活動量計を、終夜睡眠ポリグラフ検査と比較。区間ごとの感度は全機種0.93以上、特異度は0.18〜0.54。睡眠段階の判定は一貫しない。眠りの悪い夜は成績が低下 |
|---|---|
| 腕時計型1ブランドのまとめ(J Med Internet Res 2019) | 22論文の系統的レビュー、うち8論文でメタ解析。睡眠段階を推定しない旧型は、総睡眠時間を約7〜67分、睡眠効率を約2〜15%多く、中途覚醒を約6〜44分少なく見積もった。段階を推定する新型は、総睡眠時間・中途覚醒・睡眠効率で検査と有意差なし、入眠までの時間は短く見積もった。利益相反なし |
| 指輪型のまとめ(J Transl Med 2026) | 指輪型11機種・28論文(2025年4月まで)。睡眠と覚醒の一致は87%(95%信頼区間86〜89%)。浅い睡眠0.65・深い睡眠0.81・レム睡眠0.74。重い睡眠時無呼吸のふるい分けには使える可能性があるが、軽症の診断や詳しい睡眠構造の評価には代わらない。利益相反なし |
| 自分の感覚との一致(Sleep Med 2026) | 5つの観察研究(2,006人)の系統的レビュー。機器の数値で説明できる主観の分散は2.5〜16.2%。一致はよく眠れる人82.4%、不眠症の人39.4%。検査と比べ睡眠効率を+1.75〜+7.9%多く、中途覚醒を7〜30分少なく見積もった。根拠の確かさは低〜中。利益相反なし |
| オーソムニア(J Clin Sleep Med 2017/Brain Sci 2024) | 2017年の報告は、睡眠トラッカーのデータから自己診断して受診する患者の症例をもとに概念を提案。2024年の横断調査(523人、35.8%が睡眠トラッカーを定期使用)では、基準の厳しさに応じて3.0%・8.6%・14.0%が該当すると推定。横断研究のため因果は言えない |
- Chinoy ED, et al. Performance of seven consumer sleep-tracking devices compared with polysomnography. Sleep. 2021. PMID 33378539
- Haghayegh S, et al. Accuracy of Wristband Fitbit Models in Assessing Sleep: Systematic Review and Meta-Analysis. J Med Internet Res. 2019. PMID 31778122
- Jin Y, et al. Performance evaluation of finger-worn devices for sleep stage classification and sleep apnea detection: a systematic review and meta-analysis. J Transl Med. 2026. PMID 42141446
- Srivali N, Cheungpasitporn W. Concordance of wearable device sleep metrics with patient-reported sleep quality: A systematic review. Sleep Med. 2026. PMID 41946254
- Baron KG, et al. Orthosomnia: Are Some Patients Taking the Quantified Self Too Far? J Clin Sleep Med. 2017. PMID 27855740
- Jahrami H, et al. Prevalence of Orthosomnia in a General Population Sample: A Cross-Sectional Study. Brain Sci. 2024. PMID 39595886
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












